1000の褒め言葉と静かな感謝
スキ
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「1000の褒め言葉より、黙ってでも1つ買ってくれるのが作家としては何より嬉しいんだよ」
腐れ縁というか、親友の父親は人間国宝の弟子から独立した白磁の陶芸家だ。
展示会の時、おじさんはお客さんに囲まれて作品のことをあれやこれやと質問攻めに合っていた。この言葉は落ち着いてから「すごい人気ですね!」と言った際に返ってきた言葉で、なぜか心に残っている。
遊びに行くといつも迎え入れてくれて、仕事が上手くいかなくて食えないときも夕食をご馳走してくれたりとお世話になりっぱなしなのだ。
足を向けてとても寝られん。
食事が終わると決まって笑いながら言うのだ。
「出世払いでいいからね」
これまで「ありがとうございます」と何度言ったかわからない。
それこそ1000回は言ってそうな気もする。
マンガで出世した暁には、黙って作品を買おうと思う。
静かに感謝を伝えたい。
おわり
デザイン設計(Landscape)→漂流期間→マンガ家
twitter→@w_tokushun